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Concept Art
チュベローズで待ってる
加藤シゲアキ
小説の内容からオリジナル表紙を描く課題
「コンセプトアート」
私は加藤シゲアキ作『チュベローズで待ってる』
を選んで描きました。
以下、あらすじ
「ホスト、やるやんな?」
就活に惨敗し、自暴自棄になる22歳の光太の前に現れた、
関西弁のホスト・雫。
翌年のチャンスにかけ、就活浪人を決めた光太は、雫に
誘われるままにホストクラブ「チュベローズ」の一員となる。
人並み外れた磁力を持つ雫、新入りなのに続々と指名をモノにしている同僚の亜夢、ホストたちから「パパ」と呼ばれる異形のオーナー・水谷。そして光太に深い関心を寄せるアラフォーの女性客・美津子。ひとときも同じ形を留めない人間関係のうねりに翻弄される光太を、思いがけない悲劇が襲う——。
「渋谷サーガ」3部作で知られる加藤シゲアキが、舞台を「新宿」に移して描き出す新境地ミステリー。
イラスト 製作過程
Illustration Process
キャラクターの設定や顔を決めます。
今回は原作本があるので、それを読み込んだ上でデザインしますが、
他でデザインを依頼された時は依頼者様にある程度条件や設定を聞いた上でデザインします。
今回は就活全敗中の学生が主人公なので、髪色も目の色も焦げ茶固定で、
デジタルで線画だけでデザインを決めました。
本来はアナログでデザインを決め、それをデジタルで読み込んで配色し、
イラストに落とし込んでいきます。
本来のキャラクターの顔デザインのイメージは、画像上から2枚目です。
※ 上の画像が今回使用するキャラクターのデザイン、下の画像はそれとは別のキャラクターです。
背景の角度やオブジェ、メインキャラクターのポーズなどをざっくり決めていきます。
私の性格上、アタリの時点でポーズや背景がどうなっているかなど、
イラストの詳細をある程度決めておきたいので、そのあたりは結構しっかり決めて描いておきます。
先に背景を塗り込み、加工まで完成させてしまいます。
この時点で既にイラスト全体のの具体的な完成図を想像しながら作業しています。
普段は画像1枚目のオブジェに影や光を入れた段階で完成なのですが、
この作品の舞台は夜の街、ストーリー内では人間関係のうねりと主人公・光太の心情の変化が目立っているので、暗い雰囲気や人間関係ならではの独特な不安感や罪悪感を表現するため、塗り込んだ上から更に階調化のエフェクト(CLIP STUDIO内蔵)をかけました。
エフェクトをかける前とかけた後では、色味や塗り方の硬さがかなり変わっていると思います。
エフェクト使用後
下絵を描いたあと、ペン入れをします。
アタリ段階で完成させた裸のポーズに、下絵として髪の毛や服や表情を被せます。
先ほども言いましたが、私の性格上こういうものは詳細に描いておきたいタイプなので、下絵の段階で口の空き具合や靴紐に至るまで詳細に描いていきます。
ペン入れする時の線は、できるだけ1つの長い線で描くように意識しています。
線画が綺麗だと、それだけでかなり見栄えが良くなります。
今回は着ているものがスーツ(しかも雨と湿気で少し重くなっているもの)なので、
あまりシワは描き込まず、目立つシワのみ描いていきます。
線画レイヤーの下にパーツごとのフォルダーを作り、
そのフォルダーの中にさらにパーツごとの下塗りレイヤーを作ります。
そしてそのレイヤーに、下塗りとして色を置いていきます。
完成形の雰囲気を想像し、この時点である程度くすみ具合や配色を調整していきます。
夜&雨なので白いシャツは紫がかったグレーにくすませ、逆に黒いスーツは雨に濡れた感じと光が当たってテカっている感じを引き出すために、真っ黒ではなく少し明るめに設定します。ちなみにスーツも、シャツや背景との色合いを合わせるために紫系統の濃いグレーにしています。
各パーツの下塗りレイヤーの上に乗算レイヤーを作り、下塗りレイヤーにクリッピングします。
そして色はまたしても紫がかったグレー、ブラシは透明水彩ブラシ(CLIP STUDIO内蔵)で影を描いていきます。紫系統の色やくすんだ色は、ラストに透明感を乗せられるのと、彩度や明度のせいでイラストがチカチカしてしまう現象を抑えられるので、普段は服の塗りに愛用しています。
普段の肌の影塗りは少しくすんだオレンジピンクで塗っていますが、今回は夜&雨に加えて主人公の光太は就活全敗中で疲れているので、健康的すぎる色味は合わないと判断し、今回は肌の影塗りも服の影と同じ紫がかったグレーで描きます。
青紫(彩度高めのものと明るいもの2色)でハイライトを入れます。
髪の毛や瞳、服が照らされている感じはもちろん、
アイドルのイラストなどでもよく目にする反射光を服の一番端に入れ、街中でいろんな方向から光が当たっている感じや雨のせいで服がテカっている感じを表現しました。
また私が絵を描くときは、影とハイライトの明暗差を大きくすることで自然と人物に目がいくように調整しながら描いています。
雨や服についた水滴などを描いたのち、キャンパスの四隅にエアブラシ(黒・乗算)で影を入れます。その後、小説のタイトルと作者名を入れて完成です。
この小説は冒頭のみならず雨に降られるシーンが多く、目まぐるしい環境の変化に取り残されていく光太の姿が描かれているので、四隅に影を入れて光太一人にスポットライトが当たっているような表現にすることで、光太一人だけが取り残されている雰囲気を出しました。
また、この小説の表紙や公式サイトに使われている色が鮮やかなピンクと黄色なので、雰囲気が明るくなりすぎず、また、よりディープな夜らしい雰囲気になるように、加算・発光レイヤーに鮮やかなピンク色でタイトルを乗せました。
タイトルを目立たせるために、作者名は(同じレイヤーに)より背景に馴染みのいい青紫を乗せました。
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